CPUのブランドで現在主流の「AMD Ryzen」と「Intel Core i」シリーズがでているが、両社のCPUはどのような違いがあるのか?どのような用途に向いているのか?
このような疑問に今回の記事では以下のポイントをふまえて比較し、解説します。
こちらの記事にて、当サイトが厳選したおすすめゲーミングPCを紹介しています。ぜひチェックしてください。
AMD RyzenとIntel Core iシリーズCPUの大まかな違い
ここではAMDとIntel製CPUにはどのような違いがあるのか、それぞれどのような特徴があるのかを大まかに解説します。
シングルコア、マルチコア性能の違い
コア性能 | 重要視される用途 |
---|---|
シングルコア | アプリ自体が高負荷なゲームの処理など |
マルチコア | 動画編集やストリーム配信など、複数のアプリやコアを平均的に扱う処理 |
シングルコアの性能が高いと、一例として8コアあっても4コアしか使用されない、といったことが多いPCゲームにおいて処理速度が早くなります。
基本的に、使用するアプリケーション自体の負荷が高いとシングルコアの性能が問われます。
マルチコア性能は、複数のコアを平均的に使用する動画編集ツールや、複数のアプリケーションを扱う場合に真価を発揮します。
AMD Ryzenシリーズのシングルとマルチコア性能
昔はAMD製のCPUはIntel製CPUよりシングルコアの性能が低く、マルチコアが多いモデルが多いので、マルチタスク用のビジネスCPUとしての用途がメインでした。
しかし今やRyzenシリーズが登場したことでシングルコアの性能も上がり、もともと多かったコア数も相まってゲーム用途にも十分使用可能なCPUへと進化しています。
Intel Core iシリーズのシングルとマルチコア性能
Intel製のCPUはシングルコアの性能がAMD製CPUよりも高く、ゲームやビジネス用途に幅広くシェアを確保しています。
マルチコアの性能ではAMD製CPUより劣るモデルもありますが、今はCore i7以上の第12世代に搭載されている「ハイブリットCPU」の登場で、AMD製CPUの有利な点であるマルチコア性能に勝っています。
価格面
Ryzen 5 3600 BOX(6コア12スレッド) | ¥25,892 |
Core i5-12400(6コア12スレッド) | ¥28,185 |
ほぼ同性能のモデルの場合、Core iシリーズよりRyzenの方が価格が安い場合が多いですが、主な理由はAMD製のCPUは生産を委託してコストを抑えていて、Intel製CPUは自社工場で生産しているためです。
Ryzen 7 5800X(8コア16スレッド) | ¥58,828 |
Core i7-11700K(8コア16スレッド) | ¥47,783 |
ただし、最近のモデルでは同程度のスペックであってもAMD製CPUの方が価格が高いこともあるので、一概にRyzenだから安いとは言えないスペック帯もあります。
各社それぞれCPUのモデルが数多く揃っているので、価格に対して自身が求めるスペックで比較した場合に、AMD製CPUがコスパが良いという結果になりやすいです。
2022年8月では、「Core i5 12400F」がミドルスペックの中で一番コスパに優れているとして人気ですが、少し前までは「AMD Ryzen 5 3600X」が人気でした。
このように時期によっては、Intel製CPUがコスパに優れるCPUとして人気になることもあるので、平均するとそこまで大きな価格差は今ではないと思ってよいでしょう。
消費電力
CPUモデル | TDP |
---|---|
Ryzen 5 3600 BOX(第3世代) | 65W |
Ryzen 5 5600X(第4世代) | 65W |
Ryzen 7 5800X(第4世代) | 105W |
Core i5-11600(第11世代) | 65W |
Core i5-12400(第12世代) | 65W |
Core i7-12700K(第12世代) | 125W |
一例として両社のミドルスペックCPUの消費電力を比較すると、Intel製のナンバー末尾に「K」が付くモデルはオーバークロック対応モデルのため、Intel KシリーズのTDPは大きくなります。
AMD Ryzen製CPUはもともとオーバークロックが可能な仕様のCPUです。
TDPとは、大まかに言うと「このくらいの電力で消費した発熱を排熱できるように設計しなさいよ」というメーカーの指標であり、オーバークロックや電力制限を解除した場合はTDPが高くなります。
そのため、用途によっては差は出ますが、オーバークロックなどを使用しない場合、両社の最新世代CPUは消費電力による差はあまりないと言っていいでしょう。
RyzenとIntelどちらがいい?
ここでは、AMD RyzenとIntel Core iシリーズのCPUは、どちらが優れているのか。
項目ごとに解説し、それぞれの特徴を紹介します。
ノートパソコン
ドスパラが販売するゲーミングPC「ガレリア」シリーズから、同程度のスペックのノートPCで比較します。
ガレリア XL7C-R36H(Intel製CPU)
グラフィック : RTX 3060
メモリ : 16GB
ストレージ : 512GB NVMe SSD
モニター : 165Hz 15.6インチ
重量 : 2.15kg
バッテリー : 7.1 時間
最新世代のIntel Core i7 第12世代CPUと、165Hzの液晶モニターを搭載したゲーミングノートPCです。
価格は2022年8月現在では「209,980円(税込)」になります。
ガレリア XL7R-R36(AMD製CPU)
グラフィック : RTX 3060
メモリ : 16GB
ストレージ : 512GB NVMe SSD
モニター : 144Hz 15.6インチ
重量 : 2.1kg
バッテリー : 6.3 時間
最新世代のCPU、AMD Ryzen 7 5800Hと、144Hzの液晶モニターを搭載したゲーミングノートPCです。
価格は2022年8月現在では「182,980円(税込)」になります。
両ノートPCに使用されるCPUの比較結果
単純にシングルコアとマルチコア性能は、Intel製CPU搭載の「ガレリア XL7C-R36H」が勝ります。
これはIntel Core i7以上の最新世代CPUに搭載された「ハイブリット型CPU」によるところが大きいです。
ハイブリット型CPUとは、メイン処理の「Performance(パフォーマンス)コア」とサポート的な位置づけの「Efficient(エフィシエント)コア」に分かれた構造のCPUを指します。
これにより電力消費を抑えつつも、従来よりもスムーズな処理をこなすことが可能になっています。
しかし、AMD製CPU搭載の「ガレリア XL7R-R36」は、144Hzモニターというパーツ差を考慮しても約2万円ほど価格が安くなっています。
スペックを少し落としてもいいから価格を抑えたい方にとっては、AMD Ryzen製CPUを選択するのがおすすめです。
このようにミドルスペックのCPUで比較すると、2022年8月現在では、性能を優先するのであればIntel Core i7 第12世代以上が一歩優れています。
ビジネス用途はIntelとRyzenのどっちがいいか
ビジネス用途においては、「Officeソフト」や「Excel」による資料作成や計算が主な用途になります。
これらのツールは要求スペックが低いので、現在販売されている主流のCPUは、両社とも軽めの作業であるOfficeソフトなどの処理は全く問題なくこなせる性能を持っています。
ビジネス用途の中にはクリエイティブな作業も含まれる場合もありますが、後述する「クリエイティブ用途」で解説します。
そのため特に大きなこだわりがなければコストパフォーマンスの良いRyzenモデルを選ぶことをおすすめします。
ゲーム用途
ゲームをプレイする場合は、マルチコア性能も重要ですが、同じコア数であればシングルコアの性能で大きく差が出ます。
Intel製CPUはもともとシングルコア性能が高いこともあり、ゲーム側もIntel製CPUに合わせて設計されている物が多く、ゲームの処理に関してはIntel Core iシリーズがAMD Ryzenシリーズより優秀です。
しかし、動画配信も絡むとマルチコア性能に優れたAMD製CPUのほうが優秀な事が多く、ストリーマーとして活動する予定の方は、AMD Ryzenシリーズもおすすめです。
価格は少し高くなりますが、Intel製のハイブリット型CPUはマルチ、シングルコア性能ともに優れており、2022年8月現在では万能なCPUとしておすすめです。
クリエイティブ用途
「3D CAD」「動画・画像編集作業」「Blender」などのクリエイターとしての用途は、基本的に価格に対してパフォーマンスが大きいのがAMD Ryzenシリーズです。
クリエイターとしての作業はマルチコア性能が主に重要になりますが、AMD製CPUは構造的にIntel製CPUより並列処理能力に優れます。
そのため、そこまで高性能・高価格のCPUを使用せずとも高い計算能力を発揮することが可能で「Cinebench R23 (Multi-Core) CPU別のスコア」を見ると、同スペック帯のスコアはAMDが圧倒していることがわかります。
また、当サイトではクリエイターPCのおすすめモデルも紹介しているので、気になった方は参考にしてみてください。
RyzenとIntelどっちがいいかのまとめ
各項目でIntelとRyzen製CPUの比較をしましたが、簡単にまとめると以下のようになります。
ゲーム性能はIntel製CPUが今は一歩リード
Intel製CPUは、特にCore i7 i9第12世代のハイブリット型が一番目を引く性能を誇っていて、それでいて価格も既存のハイエンドCPUよりかなり安いのでコスパに優れています。
2022年8月現在でも、「Core i5 12400F」がコスパに優れたCPUとして人気があり、ゲーム性能も現在発売されているタイトルで高品質な環境でプレイできるパワーがあります。
かといってAMD製CPUはゲーム性能に劣っているかというとそうではありません。
「Core i5 12400F」のライバルとなる「Ryzen 5 5600X」は価格は少しだけ高くなりますが、総合的な性能は約11%優れています。
クリエイティブな作業はAMD製CPUがおすすめ
画像・動画・3Dモデル・動画配信などの処理能力はAMD製CPUが、価格に比べてパフォーマンスを大きく発揮します。
消費電力においてもIntel製CPUのオーバークロックモデルより低消費なので、低燃費かつ低価格のCPUです。
また、自作PCユーザー視点から見ると、マザーボードとのソケット互換性が高いので、細かく性能と価格のバランスを見てできるだけ安いパーツを選びやすいことも大きなメリットです。
Ryzenはやめとけと言われる理由
Ryzenで検索をしようとすると、「Ryzen やめとけ」とサジェストワードが出てくる理由について解説します。
先に理由をまとめると「Intelより知名度が低く、AMDが登場した時のイメージを引きずった古くからPCに知識のある人の声が大きい」からというのが大きな理由です。
Ryzenモデルはクリエイティブな用途でも非常に大きな効果を持ち、ゲーム性能も十分かつ価格が安いのでコストパフォーマンスの良いCPUです。
パーツの相性の問題
シェア率の問題で、Intel Core iシリーズよりパーツの相性の問題に対する情報が少なく、いざ買ってみると相性が悪かったなど、そういった経験からRyzenはやめとけと言われてましたが、それは昔の話です。
今ではAMD製のCPUとマザーボードは互換性に優れており、GPUも相性問題で装着出来ないということもありません。
それよりも今は、IntelのマザーボードはCPUの世代が変わるごとにソケット形状が変わるので、CPUの世代をワンランク上にするためにはいちいちマザーボードもセットで買い換えなければならないためコストがかかります。
Intelの方がゲーム用途に向いている
ゲーミングPCを組むならRyzenよりIntel Core iシリーズの方がわずかながら優れているため、Ryzenはやめとけと言われる理由のひとつとも考えられます。
確かに同世代に発売されたモデル同士での性能差はIntelがゲーム処理に優れている場合が多いですが、価格面でいうとIntel製CPUのほうが割高な場合が多いです。
重要なのは、自身が求める環境に対してそのCPUが予算と噛み合っているかなので、今では両社ともどちらがゲーム性能に優れているかは簡単に決めつけられません。
Ryzenが安い理由は?
「価格面」でも詳しい解説を行いましたが、大きな理由はIntelは自社工場でCPUを製造。AMD製のCPUは設計は自社ですが、生産は専用の企業に委託してコストを抑えているからです。
細かいところでいうと、Intel製のCPUはマルチコアを一枚のチップで構成しているのに対して、AMD製CPUは複数のチップが合体した構成のCPUでコストを抑えています。
そのため、性能的にはさほど差はないのに対して価格が抑えられたモデルがAMD製CPUには多いです。
RyzenとIntelの違いについてよくある質問
- Ryzenのほうが安いということは性能が低いからですか?
-
そんなことはありません。
「価格面」で解説している通り、Ryzen製CPUにはコストを抑えられるちゃんとした理由があり、安いパーツを使って手抜きをしているわけではありません。
- Intel製CPUのソケットが世代ごとに変わるのはなぜ?
-
単純に売上のためです。
ソケット形状を変えればIntel製マザーボードも売れるからです。
AMD Ryzenがソケット形状を頻繁に変えず互換性が高いのは、そういったIntelに差をつけるためと、後発のメーカーなのでそこまで強気に行けないという理由があります。
- 結局ゲームはIntel製CPU1択?
-
厳密に言うとNOです。
よくわからないけどとりあえずゲームだけやりたいという人には、Intel製CPUを搭載したゲーミングPCを選べば間違いありません。
しかし、自作PCを組む場合はAMD Ryzen製CPUは大きな味方になります。
マザーボードのソケット形状の互換性が高いので、様々なスペックのCPUと予算を天秤にかけてパーツを吟味できる自由さが生まれるからです。
これにより、自作PCにおいてはIntel製パーツを使用したPCより安上がりになりやすく、CPUのランクをアップする際にもソケット形状のせいで取り付けができないということになりにくいです。
またTarkovなどの重いゲームはRyzen7 5800X3Dとの相性が良いと報告されており、ゲームによっても異なります。
- ゲームも動画配信もしたいときはどちらが良い?
-
マルチタスク性能が問われるので、AMD Ryzen製CPUのほうが一歩リードします。
かといってIntel製CPUだとまともなゲーム配信が出来ないというわけではなく、2022年8月時点でのミドルスペック「Core i5 12400F」でもフルHD画質であれば快適に可能です。
- グラボもIntel製CPUはGeForce。AMD製CPUはRADEONに揃えたほうが良い?
-
Intelにはこれといってありませんが、AMDには「AMD Smart Access Memory」という機能があります。
これはグラフィック機能内蔵型RyzenCPUと、RADEONの特定のグラフィックボードを組み合わせることによりグラフィックボードの性能をアップさせる機能です。
しかし無理に狙って揃えると消費電力や価格面の融通がきかないので、あまり意識して揃える必要はありません。
CPUはAMD RyzenでグラボはGeForceといった組み合わせでも全く問題ありません。
RyzenとIntelの違いまとめ
- Intel製CPUは、最新世代のハイブリット型CPUがコスパが良いけど価格が高め
- AMD Ryzen製CPUはIntel製CPUと性能が変わらず、価格が少し安め
- 自作PCにおいては、AMD Ryzen製CPUがパーツの自由度があり価格を抑えられる
- ゲームだけに特化するのであればIntel製CPUが優秀
- クリエイティブな作業もするのであればAMD Ryzen製CPUが優秀
今回は2大CPUメーカー、IntelとAMDの比較について解説しました。
筆者が感じた両社の差は、時期によってはコスパやスペックに優れるモデルがIntelかAMDどちらかに登場するので、どっちもどっちといった感想です。
しかしながら自作PCにおいては、筆者もPCを組んで感じたことですが、AMD製CPUのほうがパーツを選びやすく、CPUの載せ替えもしやすいので優秀だと感じました。
パーツに知識があればBTOショップでAMDとIntel製CPUモデルの比較ができるので、今回の記事を参考にPC選びをしてみてください。