「画面が映らない!」「急にパソコンから変な音がするようになった!」というとき、疑うべきことの一つに「グラフィックボードの故障」があります。
グラボはパソコンで映像を表示する上でなくてはならない最重要パーツですが、残念ながらパソコン初心者にはグラボの故障診断はできません。
この記事は、これまで2,000台以上のパソコンをメンテナンスしてきた筆者が、グラボの故障の見極め方と、パソコン不調時の問題解決のコツを解説します。
グラボについて詳しく知りたい方は、「GPUとは何か」をご覧ください。
※グラフィックボードは、グラボ、ビデオカード、GPUとも呼ばれます(以降「グラボ」と記述)。
グラボ故障時の症状・前兆
グラボ故障時の症状
- モニターに何も表示されない
- グラボのファンが回らない
- 負荷がかかると突然電源が落ちる
- グラボから異臭がする
- グラボから異音(キーンという高周波音など)がする
- パソコンの動作が不安定、動作が重い
- 色合いがおかしい、ブロックノイズが表示される
それぞれがどのような状態なのか、一つずつ解説していきましょう。
なお、症状によってはグラボではなくマザーボードの故障、という可能性もあるので、「マザーボード故障診断」も一度チェックしてみてください。
モニターに何も表示されない
一番よくある症状で「パソコンの電源は入るのにモニターに何も表示されない」という状態は、グラボ故障の可能性があります。
ただし、今まで普通に使えてて急にモニターに何も表示されなくなった場合は、単純にモニターケーブルが外れていたり、接続がゆるんでいるだけのことも多いです。
特にモニターケーブルが変な具合に曲がっている場合は、ケーブル内で断線している可能性があるので、まずは配線のチェックをしましょう。
また、軽い衝撃などでグラボが外れかかっている場合もあります。しっかりマザーボードに挿さっているかチェックしてください。
グラボのファンが回らない
ゲームなどの高負荷なソフトを動かしてもファンが回らない場合は、グラボ故障の可能性があります。
ファンが回らないと排熱がうまくいかず、パソコンの動作が不安定になったり、パソコンの電源が急に落ちることもあります。
ただし、低負荷な状態だとファンが回らない製品も多いので、「負荷を掛けてもファンが回らない」状態かどうかがグラボ故障の見極めポイントです。
負荷がかかると突然電源が落ちる
ゲームや動画編集など、グラボに負荷のかかる作業をすると突然電源が落ちる場合は、グラボ故障の可能性があります。
この「突然電源が落ちる」症状は、電子機器にとって極めて良くない状態です。
放っておくとストレージの故障に繋がって、大事なデータが無くなる可能性があるので、放置しないで一刻も早く対処する必要があります。
グラボから異臭がする
これはグラボに限った話ではありませんが、排熱処理がうまくいかないと温度が上昇して、コンデンサーが膨張したり焦げ付いて異臭を発することがあります。
この症状に遭遇すると、騙し騙し使えていても必ず故障します。
コンデンサーが破裂して発火することもあるので、変な臭いがしたらすぐに電源を落としてパソコン内部を確認してください。
グラボから異音(キーンという高周波音など)がする
ファンの回転とは明らかに違う音がする場合は要注意です。
異音のパターンとしては、次のようなものがあります。
- ブーン
- カラカラ
- カリカリ
- キーン、という高周波音
そして、異音の発生元・原因には次の3つがあります。
- グラボのファンが変形している
- グラボ上のチップやコイルから音がする
- パソコン内の配線がファンに接触している
上記の中で自分で対処できるのは、3の配線がファンに接触しているパターンのみです。
1と2の場合は修理対応になります。
パソコンの動作が不安定、動作が重い
ほとんど負荷がかかっていない状態でもマウスカーソルの動きが遅れるなど、全体的に動作が重い症状もグラボが原因の場合があります。
グラボではなく、ストレージが不調な時も似た症状なので、「グラボの故障の調べ方」を読んで見極めましょう。
パソコンを初期化してOSを再インストールしても症状が改善しない場合は、グラボ故障の可能性が高いです。
色合いがおかしい、ブロックノイズが表示される
パソコンは起動するけど色合いがおかしい、ブロックノイズ(モザイク、砂嵐のようなもの)が表示される場合もグラボ故障の可能性があります。特に、最新のドライバーに更新しても直らない場合はグラボ故障の可能性が高くなります。
単純にモニターケーブルが外れかかっている場合もあるので、まずは配線のチェックをしましょう。
グラボの故障原因
グラボが故障する原因は、主に次の3つです。
- 経年劣化
- 落下などの衝撃
- ホコリっぽい場所での使用
以下で詳しく解説します。
経年劣化
経年劣化が原因でグラボ上のコンデンサーが膨張し、電解液が漏れて壊れることがあります。
具体的に何年使ったら故障するかは、パソコンの使用環境や使用時間によります。
温度が高くて湿気やホコリの多い場所で使用していれば数年で故障しますし、良い環境であれば10年使っても壊れません。
この症状はグラボだけでなく、マザーボードや電源ユニットの場合もあります。
落下などの衝撃
パソコンを動かすときにパタンと倒してしまい、グラボがマザーボードから外れてしまうことがあります。
まずはグラボがしっかりマザーボードに差し込まれているかチェックしてください。
また、グラボの故障とは断定できず、メモリが外れかかっていたり、マザーボードが故障している場合もあります。
ホコリっぽい場所での使用
ホコリっぽい場所にパソコンを設置すると、長い時間をかけてグラボのファンにホコリが雪のように積もり、排熱がうまく行かなくなって故障します。
特に排熱がうまくいってない状態でパソコンの電源をつけっぱなしにすると悪影響がでる可能性があります。
机の下など目の届かない場所にパソコンを設置すると、ホコリが積もっていることに気づかないことがあるので注意しましょう。
グラボの故障の調べ方
次の3つのパターンで解説します。
- パソコンの動作が不安定な場合
- パソコン内部から異音や異臭がする場合
- 画面に何も表示されない、色合いがおかしい、ブロックノイズが表示される場合
パソコンの動作が不安定な時の調べ方
映像は表示されるけど動作が不安定な場合は、グラボのドライバーを更新して様子を見ましょう。
それでも不安定であれば、直近で何かパーツを取り付けたり、ソフトをインストールしたなど環境に変化がなかったか思い出してください。
何か変更をしていれば、変更前の状態に戻してみることをおすすめします。
⦁ 新しいソフトをインストールしたのなら、アンインストールする。
⦁ 新しい周辺機器やパーツを付けたのなら、外してドライバーをアンインストールする。
上記のような「切り戻し」作業が、パソコントラブル解決の基本です。
「切り戻し」をしても動作がおかしい場合は、周辺機器などを取り外して最小限の構成にしてから「OSを再インストール」してみましょう。
OS再インストール直後の動作が安定していたら、少しずつ周辺機器やソフトを追加してトラブルの原因を追求してください。
最小限の構成でも動作がおかしければ、グラボかマザーボードの故障が有力です。
パソコン内部から異音や異臭がする時の調べ方
パソコン内部から異音や異臭がする場合は、すみやかに電源を落として目視で確認する必要があります。
パソコンのケースを開けてグラボを取り外し、ファンに変形がないか、コンデンサーが膨張していないかチェックしてください。
また、ホコリが積もっていたらエアースプレーで吹き飛ばし、グラボだけでなくパソコン内部のホコリをすべて取り除きましょう。
グラボをしっかりマザーボードに固定し直して動作を確認してください。
また、目視で何か異常を確認できたら、危険ですので絶対に使用を控えましょう。
画面に何も表示されない、色合いがおかしい、ブロックノイズが表示される時の調べ方
最初にモニターケーブルが正常に接続されているかチェックしましょう。
単純なことですが、ケーブルが原因で画面に何も映らないパターンが最も多いです。
そして内蔵GPUを持つパソコンであれば、グラボを取り外して内蔵GPUから映像が出力されるかチェックしましょう。
予備のグラボを持っていれば、差し替えてみるのが一番わかりやすいです。
また、モニターが故障している場合もあるので、入力ポートを変えたり、別のパソコンをモニターに繋げて映像が表示されるかチェックしてください。
上記のチェックをしても画面に何も表示されない場合は、グラボの故障が有力です。
グラボが故障したらどうすればいいの?
残念ながら、グラボのような精密機器を自力で修理することは不可能と思ってください。
大手メーカーのパソコンの場合、本当にグラボが故障なのかメーカーで検証するため、パソコン本体を引き渡すことになります。
保証期間内であれば無償で修理・交換してくれますが、修理といってもファンの交換など軽い作業以外は、基本的にグラボ本体ごと交換になります。
なぜ故障した特定のチップやコンデンサーだけを交換しないかというと、高い技術力が必要になるのでグラボ本体ごと交換した方が効率が良くて安上がりだからです。
また、自作パソコンでグラボだけを購入した方は、販売店かメーカーに相談することになります。
グラボの修理費用ってどのくらい?
気になる修理代金は、製造時期やモデル、故障箇所によって変わってきます。具体的な費用はメーカーに見積もりをしていもらわないとわかりません。
基本的に保証期間外の修理は、次のような費用がかかります。
⦁ パーツ代
⦁ 技術料
技術料はファンの交換など単純な作業でも、数万円は取られます。
修理をあきらめて単体でグラボだけを買ったとしても、古いCPUと新しいグラボの組み合わせは、本来のパフォーマンスを発揮できないのでおすすめしません。
特に高性能なグラボは実売価格で4万円〜10万円以上もする製品が多く、これが結局「故障したら10万、20万のPCをまるごと買い替えた方が安上がり」と言われる理由です。
保証期間外の修理は、思っていた以上に高額になると覚えておいてください。
グラボの寿命を延ばすためには
グラボの寿命を延ばすコツは、パソコンにとって最適な環境を意識することです。
具体的には、次のような場所にパソコンを設置するのは避けましょう。
- ホコリっぽい場所
- 安定性のない場所
- 机から遠すぎる場所
- 直射日光が当たる場所
- 閉所・風通しの悪い場所
- 水回り
パソコンの最適な置き場所については、「デスクトップPCの置き場所はどこがベスト?」を参考にしてください。
グラボ故障の前兆・原因・修理方法まとめ 自分で修理は難しい
グラボを含め、パソコンの調子を個人で診断しようと思ったら次の3つが重要です。
- モニターケーブルのチェック
- 購入時の状態に戻す
- 症状を整理してメーカーに相談する
症状によっては正常に動く「モニターケーブル」や「予備のグラボ」を持っていないと、不具合箇所を特定できないことがあります。
つまり、メーカーの専門家の助けを受けずに修理をするのは不可能だと思ってください。
不具合を抱えたパソコンを騙し騙し使っていると、ディスク故障のような大きなトラブルに必ず発展します。
保証期間が過ぎてしまったパソコンが故障した場合は、買い替えてしまった方が安い場合多いので、最悪な結果になる前に購入ショップに相談することが望ましいです。
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