「デバイスチート」とは、対戦ゲームにおいて公平性を著しく欠く機能を持った周辺機器や道具を使う、オンライン上だとバレにくいチートのこと。「ハードウェアチート」とも。
「デバイスチート」の意味と目的
「デバイスチート」はゲームプログラム自体に大きな改造を加えることなく有利に対戦ゲームを戦えるので、「手頃な勝率ブースト行為=チート」として広まっています。
オンラインゲームでは各々が好きなデバイスを使用できるのが基本。ですが行き過ぎた性能を持った高性能デバイスは競技を根底から覆す可能性すらあります。こういった物を時としてデバイスチートと言います。
とはいえ一般流通しているデバイスを買うことを規制する根拠などもなく、現状は(オンラインでは)野放し状態です。
ではどのようなデバイスを使ったらチート行為とみなされるのか?ここではゲーム性を考慮した上で考えてみたいと思います。
デバイスチートは悪か?
効率的な結果を残すために道具を加工するというのは、ゲーム以外のスポーツ競技においても行われます。ただしこれらの場合は道具に対する規定などもあり、その範囲内であることがルールとして決まっています。
しかしゲームにおいては使用する道具=デバイスが多岐にわたり、ユーザーが自由に選べるのが特徴。なおかつデバイスも細かな微調整機能や他のデバイスとは違う機能面での付加価値を競っています。これはユーザーが使い易いこと、ユーザーが望む製品とするための企業努力でもあります。
問題なのがこのデバイスの製造メーカーによる企業努力が、ゲームにおいては公平な競争及び競技を脅かす存在になるかどうか、そしてそれを扱うユーザーに悪意があるかも問題であり、それらに対して明確な規定が存在していません。
つまり一概にデバイス改造=デバイスチートとは言い難いのです。
デバイスチートの具体例
実際にデバイスチートと考えられるものを、その影響度と嫌われ度で考えてみました。
デバイス改造の例 | 勝率に与える影響 | 嫌われ度 |
---|---|---|
マウスコンバーターの使用 | 影響度:大 | 嫌われ度:大 |
マクロなどによる入力の簡略化 | 影響度:大 | 嫌われ度:大 |
モニター上の照準線表示 | 影響度:中 | 嫌われ度:中 |
ゲーミングモニターの使用 | 影響度:大 | 嫌われ度:- |
アケコン・ハンコンなど専用デバイスの使用 | 影響度:中 | 嫌われ度:- |
純正品以外のパーツの追加 | 影響度:中 | 嫌われ度:小 |
基本的に、嫌われ度中以上の改造はBANされる可能性があるので注意しましょう。
マウスコンバーター使用(影響度:大/嫌われ度:大)
「マウスコンバーター」とは、キードボード+マウス入力とコントローラー入力を変換する周辺機器。
FPS・TPSゲームタイトルですと、通常のコントローラー操作ではキーボード+マウス操作に敵いません。なのでパッド接続のユーザーには、その分を補う公式オートエイム機能=AIMアシストがゲーム側で働き、バランスを損なわないようにしています。
問題視されているのはFPS・TPSゲームタイトルにおいてキーボード+マウス入力→コントローラー入力へと逆の変換をした場合です。
これが問題視されるのは「マウスを使っていながらコントローラー接続と認識させることで、AIMアシストの恩恵を受けてしまう」ということです。
つまりキーボード+マウスを使っていて操作性で有利でありながら、オートAIMを付与される状態になるのです。以前は変換の精度も悪かったのですが、今のマウスコンバーターはマウスの精密な動作を反映する事が可能になってしまいました。
この行為はAIMアシストの不正利用であり、FPS・TPSゲームタイトルの開発元が明らかな不正であると認識・告知しておりBAN対象としています。
マクロなどによる入力の簡略化(影響度:大/嫌われ度:大)
「マクロ入力」とは、予め動作を簡略化する便利機能もしくはチート行為。
特定のキー入力などをボタン一つで自動化するものがマクロ機能です。Windowsにおける各種ショートカット機能やパスワード入力を簡略化するのに使われます。
マクロ機能自体はキーボードやマウスの製造メーカー側で用意されていることも多く、作業をすることが目的にもなるMMORPGでは重宝されました。その実状からゲーム側でも作業の自動化が進んだというケースもあります。この場合はゲーム内のキャラクターが生産などの作業をしつつ、ユーザーはチャットなどをしてのんびりと過ごすことが容認されていました。
ただしMMORPGで行き過ぎた自動狩りは、モンスターなどのオブジェクトを枯渇させるBOT行為になり不正とみなされます。
一方でこのマクロ機能が特に問題となってくるのが格闘ゲームとなります。難しいコマンド技であっても、予めマクロを組んでおけば1ボタン押すだけで理論上の最短時間で入力が完了し技が出せるわけです。
FPS・TPSゲームでは射撃の際のクリック動作を簡略化します。例えばセミオートでしか撃てない銃においては連続してクリックするマクロを組むことで、フルオート射撃並みの連射が可能になります。あるいはリコイルコントロールが難しいフルオート銃、3点バーストなどの断続的なクリック操作が必要な銃の場合なら、一定のテンポでクリックするマクロを組むことでコントロールしやすくなります。
以上の事からマウスコンバーター同様に、不正行為とするゲームが多いです。
モニター上の照準線表示(影響度:中/嫌われ度:中)
「モニター上の照準線」とは、ゲーム内ではなくモニターに直接見やすい照準を表示させるチート行為
FPSやTPSゲームにおける照準は切っても切れない関係です。しかしスナイパーライフルなど照準器を覗き込む動作が必要な物に関しては、画面上から消されることがあります。つまり狙いが付けられない状態をゲームデザインとして意図的に作っているわけです
とはいえゲーム内カメラの中心点=照準線の交差点となっていることが多く、覗き込み動作をする前に中心に敵を捉えていれば実際の射撃までの時間は短くなります。
この事を利用して、ゲームに依存しない形で照準を付ける製品があります。モニターにシールなどを貼り付ける方法もありますが、ゲーミングモニターであれば照準線を表示する機能を備えた物がセールスポイントとなっている場合もあります。
これがチートかどうかは議論が別れるところですが、少なくともオフライン大会では不正行為として排除されるでしょう。
ゲーミングモニターの使用(影響度:大/嫌われ度:-)
「ゲーミングモニター」とは、PCの対戦ゲームで勝つためには必須のデバイス
通常のモニターのリフレッシュレートが60Hzなのに対して、ゲーミングモニターは144~360Hzあります。これは1秒間に表示可能なコマ数を意味しているのですが、同時に1秒間に何回の射撃チャンスがあるかも意味しています。実際に144Hz以上のゲーミングモニターを使うと遮蔽物から飛び出してくる敵の動きがわかりやすくなります。
また最近のゲーミングモニターでは暗闇を使ったカモフラージュを見破りやすくする、ガンマ値補正機能がついていることも多いです。これも高リフレッシュレートである事と同時に、ゲーミングモニターのセールスポイントの1つとされることがあります。
いずれの機能もゲーミングモニターとしては当たり前の機能と認識されるようになり、むしろゲーム側でも視認性を上げる設定を用意するなどの動きもあります。そしてゲーミングモニターそのものの使用に関しては禁止するどころか、逆に大会では協賛企業から貸し出してもらうなど使用することを推奨しています。
デバイスによって有利になる例ですが、チートではありません。
アケコン・ハンコンなど専用デバイスの使用(影響度:中/嫌われ度:-)
「専用デバイス」とは、特定ゲームをより楽しむための特殊な周辺機器
アーケードコントローラー=アケコンも、実は特定ゲームで入力する作業においては有利になることがあります。
パッドでは両手の親指だけでのコマンド入力が多くなりますが、アケコンを使うと右手の5本の指で操作が可能です。特に同時押しを必要とするコマンド技では難易度が変わってきます。
またドライブシミュレーターなどで使われるハンドルコントローラー=ハンコンもまたゲーム内では有利になります。
コントローラーではハンドルやペダル操作がON/OFFのみでの入力になりがちで、繊細なコントロールには不向き。しかしハンコンではハンドルの舵角やペダルの踏み込み具合など、多段階で入力できるので繊細なコントロールを可能とします。
ただし比較対象がパッドに対してのものであり、ゲームデザインとしては最初からこのような専用デバイスを想定しているため、問題視されることはなくむしろ使用を推奨されることもあります。
純正品以外のパーツの追加(影響度:中/嫌われ度:小)
「純正品以外のパーツ」とは、フリークやエイムリングといった簡単な追加パーツ
フリークやエイムリングと言われるような純正コントローラーに追加するパーツ類もデバイスチートに分類されることがあります。
スティックは傾けたときの角度が入力値になりますので、スティックが短いと僅かな移動量でも大きな値が入力されてしまいます。フリークはスティックの高さを上げることで、指での操作範囲を意図的に大きくし、入力される値は相対的に小さくすることで繊細なコントロールを容易にします。
エイムリングはスティックの下部にクッションを敷くことで、過度なスティックの傾倒を防ぎます。フリークが移動量での操作性向上に対して、エイムリングは指の力加減を操作性に変換しています。
デバイスチート規制の実態
チート=不正とついている以上は「ゲーム開発元が明言すれば禁止行為になる」といえます。
デバイスチートの中でもマウスコンバーターによる不正AIMアシスト利用は、実質的にはソフトウェアによるオートAIMチートと変わらず悪質なので、発覚し次第BAN対象になります。マクロもゲームによっては禁止行為です。
デバイスチートの厄介なところは、デバイスを所有する行為自体は止められない点です。そしてゲーム業界における企業間の利害関係が、デバイスチートか否かを決めます。
ゲームの公式大会では堂々とデバイスが提供されることは当たり前で、機能満載のゲーミングモニターやゲーミングマウスは参加者なら使用でき、参加者が自前のデバイスを持ち込むことも許可されます。
逆にこれを認めないと大会の運営が成り立たちませんし、誰しもが認める公平感があるのなら、完全な公平性は無くても良いのです。そもそもPCゲームに関して言えば、使っているゲーミングPCの性能差からして公平ではありません。
結局のところは「ゲーム開発元の意にそぐわない製品とその使用は認められない」というのが、デバイスチートの基準になります。